門田瑠衣子|もんだるいこ
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NPOは、人間だけでなくAIにも社会課題を伝える時代へ
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NPOは、人間だけでなくAIにも社会課題を伝える時代へ

最近、毎日のようにAIのことを考えています。

今日もまたAIの話です。

これからのAI時代に、NPOが「社会の視点を教える仕事」を担えるのではないか、という話です。

先月公開された、外務省NGO研究会のAI活用レポートを読みました。

国際協力活動におけるAI活用を通した支援の質と実施能力向上の研究(PDF)」というものです。

100ページ近い報告書で、国際協力NGOにおけるAI活用の可能性が整理されています。

いま私自身も、AIやAX(AIトランスフォーメーション)によってNPOの活動をどう発展させられるかを考えているので、かなりしっかり読みました。

読んでいて強く感じたのは、AIは「人を減らす道具」ではなく、「人にしかできないことに時間を戻す道具」として整理されているということです。

これは、とても納得感がありました。

議事録。

報告書。

翻訳。

広報。

助成金申請。

事業評価。

こうした国際協力NGOの日常業務は、AIとかなり相性がいいです。

これは、私の現場感覚とも重なります。

国際協力NGOは、慢性的に人が足りません。

海外駐在員を募集しても、なかなか人が集まらなかったり。

資金調達の担当者も、採用が簡単ではないんです。

資金も限られています。

その中で、説明責任、ガバナンス、助成金申請、報告、広報、寄付者対応など、求められる業務は増え続けています。

平たく言うと、

「人もお金も足りないのに、時代の要請で、説明責任はどんどん重くなっている」

という状況です。

だからこそ、AI活用は避けられない。

ただ、ここで大切なのは、AIで効率化して終わりではないということです。

効率化によって生まれた時間を、支援者への対応、受益者との対話、現地パートナーとの関係づくり、事業の質の向上に使えるようにする。

そこに、AI活用の意味があるということが報告書には書かれていました。

これには私も納得です。

報告書には、まだ書かれていない論点がある

この報告書はとても面白かったです。

国際協力やNPOの業界にいる人以外にも、ヒントが多い内容だと思います。

一方で、正直に言うと、情報はリッチでしたが、最新ではないとも感じました。

おそらく作成に時間がかかっているので、直近の情報を入れられないなど、仕方ない部分もあると思います。

「ここが大事だけど、抜けているのでは」と感じた論点の一つは、AI社会におけるNPOの新しい役割です。

これからの時代、企業や行政の意思決定に、AIが深く入り込んでいきます。

採用。

融資。

教育。

福祉。

行政サービス。

さまざまな場面で、AIが判断を支援し、場合によっては実行まで担うようになっていきます。

そのときに問題になるのは、AIが今の社会の偏りをそのまま再生産してしまうことです。

たとえば、採用判断にAIを使ったとき、過去のデータを学習した結果として、男性の方が有利になってしまうかもしれません。

融資や福祉の判断でも、ネット上に声を出しやすい人の情報ばかりが反映され、声を出せない人たちが見えにくくなるかもしれません。

AIは膨大な情報を学習します。

でも、その情報には偏りがあります。

インターネット上にない声は、抜け落ちます。

声を上げにくい人の痛みは、データになりにくいです。

ちなみにここまでは、報告書にも書かれていました。

でも、もう一歩先が、結構大事なのです。

それは、ここにNPOの役割があるということ。

NPOが持っているのは、現場で積み重ねた“社会の見方”

NPOが持っているのは、単なる知識ではありません。

現場で積み重ねてきた「社会の見方」です。

人権。

ジェンダー。

貧困。

環境。

国際協力。

こうしたテーマに長く向き合ってきた団体には、統計だけでは見えない視点があります。

たとえば、

「この文脈では、女性は本音を言いにくい」

「支援が必要そうに見えても、恥ずかしさや恐れから隠れてしまう人がいる」

「統計にはまだ出ていないけれど、もうすぐ社会問題化しそうな兆しがある」

こういうことは、現場にいないと見えてきません。

これまでNPOは、こうした声を「人間」に向けて伝えてきました。

「ここに課題があります」

「こういう声があります」

「見えにくいところで、こういうことが起きています」

と、社会に、人々に伝える役割を担ってきました。

でも、AI時代には、もうひとつの役割が生まれると思います。

それは、AIに対して社会の視点を教えることです。

AIに“社会の視点”を教える新しい役割

これからAIエージェントは、人間の代わりに情報を集め、分析し、判断し、実行するようになります。

そのとき、AIには教えなければいけないことがあります。

何を優先すべきなのか。

どんな声が抜け落ちているのか。

誰が排除されている可能性があるのか。

どんな配慮が必要なのか。

これは、ある意味で「AI向けの社会教育」です。

企業や行政が使うAIエージェントに対して、NPOが社会の大切な視点を教える。

そんな仕事が、これから出てくるのではないかと思っています。

もちろん、その担い手はNPOだけではないかもしれません。

ただ、現場を持ち、声なき声に向き合ってきたNPOは、この役割を担える立場にいるはずです。

AI時代に、NPOの役割は小さくならない

AIによって、翻訳や文書作成や議事録づくりは効率化されていきます。

助成金申請や報告書づくりも、かなり変わっていくでしょう。

でも、それでNPOの役割が小さくなるとは思いません。

むしろ、問いは次の段階に進みます。

AIで作業が効率化されたあと、人は何に時間を使うのか。

市民は、どう社会課題に関わるのか。

声を出しにくい人の存在を、誰が社会に伝えるのか。

そして、AIエージェントに何を学ばせるのか。

私はここに、NPOの新しい役割があると思っています。

NPOはこれまで、人に社会課題を伝えてきました。

これからは、AIに社会の視点を教える存在にもなっていくのかもしれません。

AI時代だからこそ、現場を持つこと。

声を聞くこと。

見えにくい人の存在を見続けること。

その価値は、むしろ高まっていくと思います。

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